◆「ひやおろし」とは、「寒おろし」とは◆

春先にしぼられた新酒は、一度、火入れされたあと貯蔵されます。
暑い夏の間をひんやりとした蔵で眠ってすごし、熟成を深め、やがて秋風が吹き始め、 ほどよく熟成されたお酒は、2度目の火入れをせずに出荷されます。

昔、2度目の加熱殺菌をせず「冷や」のまま、貯蔵用の大桶から木樽に「卸して」 出荷したことから、「冷卸(ひやおろし)」と呼ばれ、秋の酒として珍重されてきました。

ときは移って現在、貯蔵の形こそ、タンクや瓶に変わりましたが、春先に一度だけ加熱殺菌し、 秋まで熟成させて、出荷前の2度目の火入れをせずに出荷する〈ひやおろし〉の本質は昔と変わりません。

9月頃から出荷されるのが「ひやおろし」は豊穣の秋にふさわしい、穏やかで落ち着いた香り、 滑らかな口あたり、濃密なとろみが魅力のお酒です。

「寒おろし」はさらに熟成期間を伸ばし、 北国では木枯らしが吹き始め、日本全国でも本格的な寒さが訪れる11月下旬から、満を持して出荷されます。
豊かな旨みがさらに深まり、まろやかでとろりとした完熟の味わいが「寒おろし」の魅力です。
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◆2度目の「火入れ」をしないワケ◆

日本酒では、発酵を止め、雑菌を殺し、香味を保つため、「火入れ」という低温加熱殺菌を行います。通常は2回、貯蔵する前に1度、さらに出荷直前に1度、行われます。〈ひやおろし〉は、この2度目の「火入れ」をせずに出荷されます。 1度目の貯蔵前に「火入れ」するのは、安定して熟成させるため。冷蔵技術が発達した現在では、「火入れ」をしない生のまま低温貯蔵することも可能ですが、それでは熟成が進まず、秋口に熟成の旨みは出てきません。 2度目の「火入れ」をしないのは、熟成による風味をそのままお届けするため。熟成中に出てきたお酒本来の香りや、馴染んだ味わいが加熱によって壊されず、そのまま楽しむことができます。お酒本来の香味がいきる蔵出し風味、それが〈ひやおろし〉です。 *出荷前の火入れを行っていないので、生酒と同じように冷蔵庫に入れて保管してください。


◆熟成が命、秋の深まりとともに深まる味わい◆

〈ひやおろし〉が出回るのは9、10、11月、まさに秋まっさかりのシーズン。ところで、この3ヶ月の間でも、刻々と〈ひやおろし〉は熟成の度合いを深めていきます。お酒の中にも、早く熟成して飲み頃になるものもあれば、ゆっくり熟成する大器晩成タイプもあり、同じお酒でも月を追うごとに味わいが深まっていきます。 そこで日本名門酒会では、いちばんバランスのいい熟成状態を随時チェックし、[夏越し酒][秋だし一番酒][晩秋旨酒]と銘うって、数ある〈ひやおろし〉の中でも「これからまさに飲み頃!」のお酒をお知らせしていきます。当サイトでもいくつかご紹介しますが、お近くの日本名門酒会加盟の酒販店に、ぜひお問い合わせください。


◆夏超し酒(なごしざけ)〈ひやおろし〉

涼風が吹き始めた9月は、夏を越したばかりの、夏越し酒〈ひやおろし〉。苦味や渋味がやわらぎ、粗さもすっかりとれ、濃醇な中にも軽快さとまろやかさをあわせもった、まさに“走り”の味わいです。


◆秋だし一番酒(あきだしいちばんざけ)〈ひやおろし〉

秋も深まったこの頃、 旬の秋酒〈ひやおろし〉も味ノリして香味のバランスも絶頂を迎え、 まさに"調熟の極み"ともいうべき味わいに。冷やでよし、お燗でよし、と料理や気分に合わせて楽しめるのも嬉しいところ。


◆晩秋旨酒(ばんしゅううまざけ)〈ひやおろし〉

まろやかさと旨みをさらに増し、その風味はまさに"熟れきった豊醇さ"と呼ぶにふさわしいもの。その濃厚な旨みは、ジビエにもぴったり。 しっかりした旨みのある素材を、味噌、醤油、塩をきかせて調理した料理とよく合います。また、晩秋旨酒〈ひやおろし〉はお燗にしても美味しいお酒。朝晩めっきり冷え込み始める紅葉のシーズンには、くつくつ煮えるお鍋と一緒に、ほどよいぬる燗でお楽しみください。
そして、「寒おろし」へと成長していきます。
それぞれの時期にそれぞれの味わい・・・日本酒は奥が深いです。



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